今、皆さんはこの動画をどこで見ていますか?
オフィス・自宅などの建物の中でしょうか?
その建物のエネルギーを、省エネ技術とPVによる創エネ技術で収支をゼロにできます。
それがNet Zero Emission Building/House(ZEB/ZEH)です。
今回は、日本のエネルギー消費の全体像、ZEBの必要性、BIPVとはなにかについて解説します。
第1話のポイント
①エネルギー消費@日本
②ZEB(ゼブ)への期待
③ZEBに重要なBIPVって?
ポイント①「エネルギー消費@日本」
ZEBの導入として、日本の最終エネルギー消費についてお話ししたいと思います。
2017年度の最終エネルギー消費は、13.4エクサジュールでした。
Eというのがエクサで、10の18乗のことです。
これを、kWhに換算すると、1kWhが3.6メガジュールなので、3.7兆kWhになります。
これを100%として、電力の占める割合、つまり電力化率を考えます。
電力消費が約1兆kWhなので、電力化率は約26%になります。
では、このうちPVが発電する電力はどれぐらいでしょうか?
シーズン1の第1話でお話ししましたPV penetrationは現在で約10%です。
となると、26%のうちの10%なので3%弱ということになります。
つまり、最終エネルギー消費のうち3%弱をPVで賄っていることになります。
この数字をみるとPVはもっと伸びしろがあるのではと思いますよね。
PVはもっと最終エネルギー消費に貢献できると思います。
さらに、電力化率が約26%ですが、これがもっと伸びていけば、PVの伸びしろも大きくなっていくと思います。
次に、電力化率の推移をみてみます。
この図は、電力化率の1965年から2017年の推移です。
ほぼ単調に増加していて、
1965年に13%程度あったものが、
1990年に20%を突破し、
2008年に25%に達し、
それから2017年まで微増といった傾向です。
これを見ると今後も増加していくことが期待できると思います。
次に、世界ではどうなっているのかを、世界の電力化率の推移で見たいと思います。
この図は、世界の各地域の電力化率の1980年と2016年の比較です。
左から右に、2016年の電力化が高くなるように並べています。
増加率は地域によって違いますが、2倍以上伸びている所もあります。
日本は25.7%@2016年なので世界平均よりも電力化率が高いという事がわかります。
つまり、全世界的に、電力化率が大幅に伸びてきたと、いうことがわかると思います。
PVの割合がまだ3%程度であること、この事実に加えて、電力化率が今度も伸びそうであることを考えると、PVはもっと最終エネルギー消費に貢献できると思います。
次に、この最終エネルギー消費の部門ごとの内訳をみていきたいと思います。
この4部門(①産業部門、②運輸部門、③業務他部門、④家庭部門)の最終エネルギー消費が報告されています。
それぞれについて、その割合を見ていきます。
エネルギー消費第1位は、産業部門です。13.4EJのうち、46.2%を占めています。
この部門は、製造業と農林水産鉱業建設業の合計です。
製造業がエネルギー消費のメインです。
例えば、何かの製品を作る工場をイメージしてもらえるとわかりやすいかなと思います。
エネルギー消費第2位は運輸部門です。23.2%を占めています。
乗用車やバスなどの旅客部門と陸運・海運・航空貨物などの貨物部門に大別されます。
2017年では、旅客が約6割、貨物が約4割です。
この部門は、電力との相性が良いのではと思います。
EVが今後、どんどん普及してくると思いますので、PVの出番も増えてくるのではと期待できます。
このEVとPVについては、シーズン3以降でまたお話ししたいと思います。
エネルギー消費第3位は業務他部門です。15.7%を占めています。
第三次産業のエネルギー消費を示していて、
事務所・ビル、デパート、ホテル・ 旅館、劇場・娯楽場、学校、病院、卸・小売業、飲食店、その他サービス(福祉施設など)の9業種に大別されます。
中でも2017年度では、事務所・ビルがエネルギー消費のシェアの1位を占めています。
まさに、今回のZEBやBIPVに関わる分野です。
そして、エネルギー消費の第四位が家庭部門です。14.9%で業務他部門と近い値です。
シーズン1の第2話でお話ししたようにFiTで家庭へのPVの普及が伸びました。家庭とPVはとても相性がいいと思います。
また、今後の新築の住宅はPVを用いてネットゼロエネルギーハウス(ZEH)になるものが増えてくると思うので、この部門内で、PVによる電力比率はもっと増えてくるのではと思います。
さて、今回の主題であります、建物に関係する業務他部門・家庭部門のエネルギー消費の推移についてみてみたいと思います。
ポイント②「ZEB(ゼブ)への期待」
ここからがポイント②のゼブへの期待です。
業務他部門と家庭部門のエネルギー消費の推移です。1973年から2017年のデータです。
2005年に山がありますが、全体でみると増加傾向にあります。
業務他部門で2.1倍、家庭部門で2.0倍になっています。
これはかなりの伸びであると思います。
業務他部門のエネルギー消費の最大のシェアは2017年度は、事務所・ビルです。
そして、そのエネルギー消費の電力が占める割合は増加しています。
つまり、PVとの相性がいいので、活躍の余地が大きい所です。
他の部門も気になるので、見てみると、運輸は1.7倍です。
EV化が進むので、ここはPVの活躍の余地が大きい所です。
産業は0.9倍です。
産業の最大のシェアは製造業なのですが、製造業全体の生産は1.7倍、経済規模は2.6倍になっているのに、エネルギー消費は0.9倍になっているということで、
エネルギー効率が良くなっていることを示しています。
さて、日本のエネルギーの消費の全体像がざっくりとわかったところで、
前置きが長くなりましたが、このビル・事務所のエネルギーをPVで賄うという、ZEBの話に入っていきたいと思います。
まず、ZEBってなんでしょうか?定義についてお話しします。
ZEBとはネット・ゼロ・エネルギー・ビルのことです。
建物(ビル)のエネルギー消費を正味で(ネット)でゼロにするというものです。
つまり、人・モノが活動・駆動する限りは、エネルギーが消費されるわけですが、これをゼロにすることはできないので、省エネと創エネで差し引きゼロにするというものです。
この創エネにPVが活躍します。
次にZEBの4段階という定義がありますので、お話しします。
4段階のZEBシリーズです。
ZEB、ニアリーZEB、ZEBレディー、ZEBオリエンティッドがあります。
まず、前にも後にも何もついていないZEBですが、
省エネの基準がありまして、従来の建物で必要なエネルギーというのがあって、それよりも50%以上の省エネ、かつ残りをPVをはじめとする創エネで賄って、エネルギー削減率が100%以上、全部か逆に電力を売るぐらいのイメージですね。
国内でももちろん例はありますが、多くはないです。
次にニアリーZEBですが、ほとんどZEBという意味で、エネルギー削減率が75%以上です。
ZEBレディですが、ZEBの準備が整っているという意味で、省エネの基準の50%以上はクリアしているものです。
ZEBオリエンティッドですが、ZEB志向です。定義が長いので、詳細はZEB Portalをご覧いただければと思います。
次に日本の政府が発表している2020、2030年目標に触れます。
こうありますので、日本の政府としても、当然、業務他部門、家庭部門のエネルギー消費をPVで代表される再エネで賄いたいというZEBへの期待がはっきりと見えています。
さらに、今後登場してくるいわゆる「スマートシティ」では、再エネの導入が必須と思いますので、今後のZEB・BIPVへの期待は大きいと思います。
では、やっとですが、本題のBIPVに話を進めたいと思います。
ポイント③「ZEBに重要なBIPVって?」
まずは、BIPVの定義についてです。
BIPV、ビルディングインテグレーテッドPVとは、
建材性能・外皮性能と一体となった創エネ建材のことです。
建材・外皮性能とは、耐火・耐風・防水・防漏水・断熱・日射遮蔽・美的性能などです。
この美的性能については、第二話以降で詳しくお話ししたいと思います。
BAPVのAはAttachedとかAppliedのことです。
これは、建材性能は屋根・外壁に任せて、外部に後付け設置するPVのことです。
住宅の屋根に置く、皆さんがよく目にするPVは、このBAPVに分類されると思います。
BAPVもBIPVに含まれるといった定義もありますが、
今回のお話ではBAPVとBIPVを区別してお話ししたいと思います。
では、次にZEBにはBIPVが必要な単純な理由についてお話しします。
まずは、現時点で可能な、ZEH(ネット・ゼロエネルギーハウス)についてです。
これは屋根置きのPV、つまりBAPVが大多数ですが、これで達成可能です。
なので後付けでもZEHは達成可能ということになります。
出典は、ZEHの定義(改訂版)からですが、詳細は、こちらを見ていただきたいのですが、標準モデル住宅で省エネが効いていれば、PV容量2.4kW、PV面積12.5平米で達成可能とあります。
つまり、屋根置きのBAPVでOKということです。
一方、ZEBの場合ですが、階数によりますがビルが高層化すると、屋根のPVだけでは足りなくなります。
つまり、外壁、ファサードとも言われますが、ここに取り付ける必要があります。
外壁の窓などの開口部、壁などの非開口部に、BAPVとして後付けすることももちろん可能であるとは思いますが、
通常は、メンテナンス性やグレア(反射による眩しさですね)の課題もありますので、ビル設計の早い段階からBIPVとして組み込まれるのが通常だと思います。
このBIPVの現状や課題については、第2話と第3話でお話しします。
今回の最後に、BIPVってどんなのだろうというのをお見せしたいと思います。
この図はIEA-PVPSの報告書の表紙に使われているものです。日本語を書き入れています。
建物のいろんなところに組み込むことができます。
まず、Pitched Roof、日本語では、斜面の屋根になると思います。
この図面では、いわゆる、片流れの屋根です。屋根と一体化しています。
次に天窓です。
この絵は、2枚のガラスで結晶シリコン太陽電池ウエハを挟んだ、いわゆるダブルガラスモジュールのように見えます。
ウエハとウエハの隙間を大きくすることで、光の透過性を上げています。
このあたりのことは、第3話のBIPVの未来(技術編)でお話ししたいと思います。
次に壁面(開口部)です。
これは、窓です。これも天窓と同じようにダブルガラスの結晶Siモジュールだと思います。
バルコニーも、シェードも、同様です。
次に水平な屋根の陸屋根(りくやね)。そして、壁面(非開口部)にも設置が可能です。
こういう感じで、建物のいろんなところに、BIPVで発電機能を持たせることができます。
ただ、ご覧の通り、大きさ、形、部材などが、部位ごとに異なりますので、規格(認証を取る規格ですね)に様々なバリエーションが出ることになります。
これは課題であるといえると思います。
これを第2話では重点的に話したいと思います。
それでは、今回の内容を以下にまとめます。
今回のまとめ
今回の一言は・・・
「PVの普及にはまだまだ伸びしろがある!」
でした。
■YouTube
音声で補足した内容を見たいという方はYouTubeの太陽電池大学をご覧ください。
■コメントについて
この記事は、出演者自身の経験と適宜文献を参照して考察したものです。
ベストを尽くしているつもりですが,もっと新しい情報がある!こんな考え方もある!という方は是非お知らせください。情報・考えを共有したいと思います。
参考資料
■NEDO高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発 動向調査等
BIPV(建材一体型太陽光発電)に関する検討 平成28年度成果報告書 (太陽光発電技術研究組合)
NEDO成果報告書データベースよりユーザー登録後ダウンロード可能
画像の出典
サムネ Photo by Richárd Ecsedi on Unsplash
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