【シーズン2:第3話前半】BIPVの未来(技術編)  (S2:BIPVの未来~ZEBのキー~)

BIPVに必要とされる技術とはどういったものがあるでしょうか?


第3話では、BIPVの大きな特徴の一つである鉛直設置、


寿命とメンテナンス性、そして意匠性を実現する技術に触れます。


今回は第三話の前半として鉛直設置の課題と可能性についてお話しします。





第3話のポイント


①鉛直設置の特徴

②寿命とメンテナンス性

③意匠性


今回は、第3話の前半として①についてお話しします。


ポイント①「鉛直設置の特徴


鉛直設置の課題はいくつかあります。


例えば、壁面の方が、屋根よりも部分的に影がかかることが一般的に多いのですが、

この部分影によるホットスポットの発生と、これに起因する劣化があります。


また、第二話でも触れたグレアもあります。


今回は、グレアとホットスポットについてお話しします。




グレアとは、日本語でいうと眩しい輝きとかいて眩輝(げんき)と読みます。


ものの見えづらさを生じさせるような「まぶしさ」のことです。


このビルはカッコいいビルでBIPVが設置されているわけではないですが、

このキラッとしている眩しい感じがグレアです。


凄く明るい感じがしますが、入射の角度によってどれぐらいの反射率があるのでしょうか。


何かの役に立つかもしれませんので、計算してみたので以下に記します。



入射角度と反射率です。


太陽電池モジュールの表面は、一般的にはガラスなので、空気からガラスに光が入射する場合を考えます。


スペキュラーな面(つまり、入射角と反射角が同一になるような面、つまりまっ平らな面)に入射することを考えます。

ガラス面の垂線との角度を入射角として、反射率を計算してみます。


こちらが計算結果です。



左端が0で真正面からの入射のことで、反射率4%です。

この図は45°で、この時の反射率は5%です。


真正面から45°まで傾いても1%しか増えていないですが、

60°あたりから急激に反射が大きくなっています。


60°で9%、約1割です。


70°で17%で、もう少しで2割です。


80°で39%で、ほぼ4割です。


実際の太陽電池モジュールのガラス表面は、反射防止膜を施したすると、

絶対値としてはここで挙げた数値よりも小さくなります。


ただ、スペキュラーな、つまり、平らな面だと、浅く入射するほど、反射率が大きくなるという傾向は、このグラフと同様です。


なので、太陽電池モジュール表面で結構、光が反射するし、

これがグレアに繋がることがわかると思います。


では、グレアを低減する、防眩という技術について触れたいと思います。


これはBAPVにも重要ですが、BIPVは目にしやすい所にあるので、特に重要だと思います。



通常と防眩タイプのガラスについてお話しします。


通常のガラスでは表面が平らで、このガラス張りのビルの写真のイメージのように、

空が写るような、鏡のような感じ。つまり鏡面を持っています。





一方、防眩タイプでは、この図のように、ガラス表面に凹凸が設けられていて、

入射光が、この凹凸によって、低減、拡散されます。


下の写真はただのイメージで、実際の太陽電池の防眩タイプのガラスとは異なりますが、

この写真のように、鏡面ではなくなって、光が散乱されるという感じです。


これで、グレアが低減され、反射光を低減できるという事は、

太陽電池セルに到達する光が増えるという事で、出力アップも期待できます。





さて、次に部分影とホットスポットについてお話しします


ホットスポットとは、PVモジュールに部分的に影がかかったときに、

その影の箇所が発熱する現象、また、発熱している箇所のことをいいます。


下の図のようなイメージで、モジュールの上に落ち葉が乗って、一部に影ができると、

影の直下のセルの発電量が、他の影がかかっていない通常のセルよりも、下がってします。




こうなると、この影直下のセルの抵抗が上がったと考えられ、

通常の影がかかっていないセルで発電した電力が、

影直下のセルで消費され、加熱されます。


程度問題なので、葉っぱぐらいでは大きな問題にはならないと思いますが、

もっと大きな影がかかったりすると、

影直下のセルの発電量が下がるだけではなくて、モジュール全体の発電量が下がる、

ということになります。



次にビルの場合の影について考えます。




鉛直面である壁面に設置されたPVへの影ですが、これは屋根置きよりも一般的には多いとされています。


簡単にいいますと、屋根置きであればモジュールは空を見上げていると思いますが、

壁面だと真横、ビルであれば街を見ているのでその分、遮蔽物が存在しうるという事だと思います。


そして、ホットスポットですが、影がかかっている部分とかかっていない部分の発電量差が大きいときに発熱が大きくなります。


つまり、快晴かつ影が濃い場合、例えば、壁面の近くに日射遮蔽物があると、

顕著なホットスポットが発生することになり発電量が低下します。


また、日々、定期的に影がかかるような場合も考えられるので、

太陽電池の劣化に繋がる可能性があると思います。


つまり、部分影がかかっても発電量が落ちにくい、

また劣化しにくいような部分影に強いモジュールが望まれます。


また難しいかもしれませんが、なるべく、濃い影がかからないような設置の配慮が必要になると思います。


さて、ホットスポットは影部のセルの発電量だけでなく、

モジュール全体、そして、システム全体へも影響を及ぼす可能性があります。


これを軽減するためのバイパスダイオードについて、その考え方をお話しします。



バイパスダイオードの役割です。


PVシステムを構成する際に、モジュールを複数数、直列に繋いだ、下の図のようなストリングを作ります。




1枚のモジュールが、この図だと真ん中のものですが、ホットスポットや他の不具合などで、周りの通常のモジュールよりも発電量が落ちている場合を考えます。


これらは直列に繋がっているので、先ほどの例と同様に、1枚のモジュールの発電量低下が、ストリング全体の発電量低下を招く、ことがあります。


つまり、この1枚のモジュールにおいて、他のモジュールで発電した電力が消費されるので、この1枚の発電量低下よりも、もっと、ストリング全体の発電量を下げてしまう、ということになります。


こういった場合に、発電量が下がっているモジュールを迂回することができれば大きな発電量低下を抑えられるのですが、バイパスダイオードで迂回路を作り、大幅な発電量低下を回避できます。


このバイパスダイオードがモジュールのどこに入っているかというと、

ジャンクションボックスに入っています。


上の図はモジュールの裏面で、この例では、モジュールの端と中心の間ぐらいにジャンクションボックスが付いています。


ジャンクションボックスは、モジュールからの電力を外部に取り出す出力端子が内蔵された箱で、ここに、バイパスダイオードも入っています。


BIPVの場合で、例えば、ダブルガラスで光の透過性のあるようなものだと、このジャンクションボックスが目立たない方がデザイン的にスッキリするというか、カッコいいので、

なるべく、モジュールの端っこに配置したり、フレーム部分に入れるといった設計になるようです。


バイパスダイオードはこのジャンクションボックスに内蔵されています。


寿命も長いと思いますが、故障の可能性もゼロではありません。


特に定期的にバイパスダイオードがオンになる、となると、繰り返しのストレスも無視できなくなると思います。


ジャンクションボックスを目につきにくくしたいとしても、赤外線カメラなどを用いた定期的な検査は必要なので、意匠と検査実行可能性の両立が必要だと思います。



さて、今回の最後のトピックとして、鉛直設置の利点になるかもしれない発電パターンについてお話しします。


鉛直設置の発電パターンです。


まず、標準的、つまり、空を向いた傾斜面設置のPVの発電パターンは下の図の真ん中のようになります。




縦軸が発電量で、横軸が時間を表しています。


横軸の左から右に時間が進んでいくという感じです。


快晴であれば、この図のように、お昼ごろにピークを迎えます。


これに対して、壁面に設置すると発電パターンがシフトします。


東を向いた壁面に設置すると、東を見ることになるので、日の出を見ることになります。


つまり、上の図の右のように、午前にピークを迎えることになります。


午後になると、急に発電量がゼロになるというわけではなく、

周囲からの反射があるので、小さいとしても発電があります。

この周囲からの反射の事をアルベドといいます。


次に西向きに置いた場合を考えると、日の入りの方角を見ることになるので、午後にピークを迎えます。


午前は、先に話したアルベドの影響で、小さいながらも発電量が得られることになります。


こうした発電パターンを見てみると、東向き、西向きにすることで、発電のピークをシフトさせることができます。


また、これらを組み合わせることで、発電パターンの平準化も可能になります。



平準化の重要性についてお話しします。


標準的な傾斜面設置の場合には、下の図の黒線のようなカーブになります。




発電量を同じとして、東向き、西向きと傾斜面設置を組み合わせて、

つまり足し算して、発電パターンをこの山なりではなく、台形に近づけることができます。


そうすると、赤線で示したような台形に平準化できたすると、例えば、ピーク高さを0.7倍。つまり、70%程度に抑えることができます。


つまり、同じ発電量だとしても、発電量のピークを低くできるので、電力系統への負担を軽減できます。


PVの更なる普及には、系統への負担を考える必要がありますので、これが今後の普及の促進につながると思います。


この平準化というか、ピークカットには、壁面設置のBIPVではなくても、他の方法がもちろんあります。


例えば、パワコンの定格よりも大きなPV容量を入れる、いわゆる過積載にしたり、

発電量が大きいときには蓄電したり、

あるいは、実行可能性を検討する必要がありますが、

PVを立てて東西方向に設置するといった方法もあると思います。


壁面設置も含めて、今お話ししたいずれの方法もコストとのせめぎあいになると思います。


ただ、今後のPVの更なる普及には、電力系統との整合は避けて通れません。


同じ再エネ電力でも発電した時間帯によってその価値、値付けが変わってくるかもしれません。


こういった電力システムや再エネの価値などにについては、また今後の別のシーズンでお話ししたいと思います。


それでは、今回のまとめに移ります。




今回のまとめ



今回の一言は・・・


壁面設置の可能性に期待!

でした。




■YouTube

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■コメントについて

この記事は、出演者自身の経験と適宜文献を参照して考察したものです。

ベストを尽くしているつもりですが,もっと新しい情報がある!こんな考え方もある!という方は是非お知らせください。情報・考えを共有したいと思います。


■PVに関するキーワードを知りたい方は、シーズンK(キーワード回)の索引をご覧ください。



参考資料

■Multifunctional Characterisation of BIPV – Proposed Topics for Future International Standardisation Activities, IEA PVPS Task 15 Enabling Framework for BIPV acceleration, Report IEA-PVPS T15-11:2020 February 2020.



画像の出典

サムネ Photo by Richárd Ecsedi on Unsplash

本編背景 Photo by 小谢 on Unsplash

ビル Photo by Michael on Unsplash

すりガラス Photo by Craig Whitehead on Unsplash

太陽電池モジュール Photo by MICHAEL WILSON on Unsplash

ビル Photo by Tony Yeung on Unsplash

鉄道トラック Photo by Christopher Beddies on Unsplash



峯元のプロフィール

■研究者情報(research map)

■論文リスト(Google Scholar)

■太陽光発電研究室(立命館大学)

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■APEX/JJAP編集委員(IOP Publishing, 応用物理学会)

■47th IEEE Photovoltaic Specialist Conference Area 2 International Co-Chair

■スカラーズ株式会社(R&Dコンサルティング)

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