【シーズン2:第4話前半】BIPVの未来(市場編)  (S2:BIPVの未来~ZEBのキー~)

BIPVに求められる発電コストはいくらぐらいでしょうか?


また、導入のポテンシャルはどれぐらいの大きさでしょうか?


今回は、市場の観点からBIPVについて考えてみたいと思います。





第4話のポイント


①求められる発電コスト


②導入量とポテンシャル


③市場予測


④導入施策


⑤海外の状況



今回は、第4話の前半として①②についてお話しします。


ポイント①「求められる発電コスト


BIPVの普及には、やはり、コスト低下による、経済合理性の確保が重要です。


では、BIPVに求められる発電コスト、これは、どのように考えればよいでしょうか?


理想的にはコストは低ければ、低いほどよいように思いますが、

現実的には、これよりも低くすべきという目安があると思います。


その比較ですが、単純ですが、一つの考え方が

「電力を、自分で作る方が安いのか、買う方が安いのか?」

だと思います。




つまり、BIPVによる電力の発電コストが、

電気事業者から電力を買う時の電気料金単価よりも安ければ、

BIPVシステムを導入した方が経済的に有利という事になります。


もちろん、ここでいうBIPVの発電コストには、

均等化発電単価(英語で言うと、levelized cost of electricity, LCOEですね)、

つまり、設置費用などイニシャルコストだけでなく、

ランニングコストであるO&M費、

そして、リサイクル・廃棄などの全ての費用を、総発電量=生涯発電量で割って求めた、

発電単価で考えるべきと思います。


さらに、こういった、低コスト化の実現に加えて、

BIPVの場合には、環境価値が上乗せされるので、

BIPVの魅力が高まって、普及に有利に働くと思います。



さて、肝心の電気料金単価についてお話しします。


電気料金は、電灯料金と電力料金の2つに大別されます。


これがなにかというと、電灯料金は、主に一般家庭部門における電気料金のことです。


つまり、家の電気代だと思えばいいです。


そして、電力料金は、主に工場、オフィスなどに対する電気料金のことです。




2017年のこれらの電気料金の平均単価を見てみると、


電灯料金が21.38円/kWh

電力料金が14.60円/kWh

です。


この値には、FiTの再エネ賦課金が含まれていません。


再エネ賦課金の解説はシーズン1の第2話にありますので、まだ見ていない人は見てみてください。


ちなみに、2020年の再エネ賦課金は2.98円/kWhということです。


さて、BIPVはオフィスなどが入っているビルに適用されるとすると、

電力料金の方を見ればよく、あくまで単価の平均ですが、

この14.60円というのは、BIPVの大量普及には、少なくともクリアすべき発電コストと言ってよいと思います。



では、最近のPVの発電コストはどのぐらいでしょうか?


世界のPVの発電コストです。




ここでいうPVはどんなPVかというと、

BIPVの量がまだごく小さいことを考えると、

BAPVやメガソーラーにおける発電コスト、と考えればよいと思います。


2017年の上半期で、なんと、9.1円/kWhです。


これは1ドル110円として計算しているので、為替によって変わるので、

約9円が目安と言っていいと思います。


2017年でこの値なので、現在であればもう少し低下していると思います。


ちなみに、中東地域、つまり、日射量が多くかつ大規模システムを安価に導入可能な所では、3円を下回っているという報告もあります。


さて、この9円という値は、先にお話しした14.6円の約3分の2の値です。


つまり、標準的なPVのコスト水準に、 BIPVでも到達できれば、十分にコスト目標を達成できるということになります。


こう考えると、もちろん大量生産が前提ですが、同じ太陽電池である以上、原理的に不可能な値ではないように感じます。


少し話がそれますが、日本の状況に触れておくと、

日本では依然として高くて、2017年のデータで、17.7円/kWhという値があります。


現在だったらもっと下がってきていると思いますが、まだ海外との差があるのだと思います。


これはまた別の所でお話ししたいと思います。


さて、話を戻して、BIPVで標準的なPVのコストレベルにもっていけるのか、ということを考えたいと思います。



標準的なPVとBIPVのコストの違いを、項目ごとに分解して考えたいと思います。




一つ目が初期費用です。


モジュールそのものの価格がまずあります。


これはBIPVの場合には、建材を代替するので、低コスト化の可能性があると思います。


あと、設置架台はBIPV用のものが必要でしょうし、設置工事はビルの建設と一緒に行われる場合が多いのではと思います。


土地造成費はビル建設に含まれるでしょうし、主に自家消費に使われると思うので、

事業用のメガソーラーで必要とされるような系統接続費は、必要ないのかなと思います。


続いて、運転維持費や廃棄費用が異なる可能性があります。


そしてこれらの①~③の費用を、④の総発電量で割ると、発電コストになると思います。


では、この総発電量は、傾斜面と鉛直の壁面でどのように違うでしょうか?


発電量は、日射量に比例しますので、もしも、傾斜面に対して壁面が暗め、

つまり日射量が小さいと発電コストがその分不利になります。


次に傾斜面と壁面の発電量の試算例についてお話しします。


面毎の年間発電量試算の例です。


ここでの数値は、2016年度のNEDO事業で太陽光発電技術研究組合様が行った、

BIPVの動向調査の報告書を参照しました。


もちろん、地域によって、この値は変わってくるのですが、

代表的な値として、東京・大手町のデータで計算されています。




まず、傾斜面、方位が南で、傾斜角が10°の場合を1とします。


これに対して、壁面がどれぐらいの値かというと、

鉛直面の南面で0.71つまり、傾斜面に対して、70%ぐらいですね。


次は、東西面を見てみると0.54、つまり、54%です。


半分強になってしまうということで、北面だと、0.31、つまり、30%強になります。


これらの値って、思ったよりも低いように感じます。 


きっと周辺環境、つまりアルベドでもう少し上がるかもしれないですし、

地域によってはこの値が前後するのだと思います。


次に、もう一度、コストのスライドをお見せします。




発電コストは、この分子と分母をみてもらうと、総コストを総発電量で割れば、出てきます。


つまり、総コストは、①初期費用、②運転維持費、O&Mですね、③廃棄処理費、そしてエトセトラに固定資産税などを含むとします。


で、総発電量を今見ましたが、BIPVが標準の0.7倍になってしまうとすると、


仮に、総コスト(①②③とetcの合計ですね)、これが、標準的なPVとBIPVで同じとしてみると、発電コストは、BIPVの方が、1÷0.7ということで、1.43倍になってしまいます。


仮に、世界平均の9.1円/kWhを使うと、1.43をかけてると、13.0円/kWhになります。


ただし、日本の値を使うと、17.7円だとすれば、もっと大きい値になってしまいます。


やはり、当然なのですが、如何に総コストを下げるのかというのが重要で、

標準的なPVと同じ発電コスト水準にするには、

総コストを0.7倍、つまり、30%オフにする必要があるということで、

これは簡単ではなさそうですね。


建材代替効果や、そのほかの工事費、また、自家消費がメインであるため、外部に売電できないという接続拒否のリスク回避などの価値に期待したいと思います。


次に導入量のポテンシャル、つまり、導入できる最大値の見積もりに進みます。




ポイント②「導入量とポテンシャル」


BIPVの日本における導入ポテンシャルです。


ここでの数値も、NEDO事業のBIPVの動向調査の報告書を参照しました。


2030年時点の既築の建築物全体で、

22~149GWのポテンシャルがあると試算されています。


この計算の仕方ですが、設置可能面積、つまり、設置可能な建物の外皮の面積を推定して、これに発電能力をかけるというものです。


具体的な数値で見てみると、1.5億平米から、7倍も大きいのですが、10.6億平米です。

これに、143.6W/m2というモジュールの発電能力をかけています。



ここで最近のモジュールは、シーズン1の第4話でもお話ししたように、

効率20%ぐらいありますので、200W/m2として計算し直すと、

31~208GWという凄く大きな数になります。


これってすごいですね。大きなポテンシャルがあります!


実際の市場予測については、次の後半でお話ししたいと思います。


それでは、今回のまとめに移ります。




今回のまとめ



今回の一言は・・・


BIPVには大きな導入ポテンシャルがある!

でした。




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■コメントについて

この記事は、出演者自身の経験と適宜文献を参照して考察したものです。

ベストを尽くしているつもりですが,もっと新しい情報がある!こんな考え方もある!という方は是非お知らせください。情報・考えを共有したいと思います。


■PVに関するキーワードを知りたい方は、シーズンK(キーワード回)の索引をご覧ください。



参考資料

■エネルギー白書

■コストダウンの加速化について (目指すべきコスト水準と入札制)資源エネルギー庁(2018年9月12日)

■NEDO高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発  動向調査等  

BIPV(建材一体型太陽光発電)に関する検討 平成28年度成果報告書 (太陽光発電技術研究組合)

NEDO成果報告書データベースよりユーザー登録後ダウンロード可能



画像の出典

サムネ Photo by Richárd Ecsedi on Unsplash

本編背景 Photo by 小谢 on Unsplash

天秤 Photo by Elena Mozhvilo on Unsplash

リビング Photo by Kara Eads on Unsplash

荒野と地球儀 Photo by Ben White on Unsplash



峯元のプロフィール

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■太陽光発電研究室(立命館大学)

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■47th IEEE Photovoltaic Specialist Conference Area 2 International Co-Chair

■スカラーズ株式会社(R&Dコンサルティング)

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