建材一体型PV、すなわちBIPV(ビーアイピーヴィー)、はZEB実現のキーパーツです。
今回は、日本においてBIPVが現状でどれぐらい入っているのか、
通常のPVと比較したBIPVの特徴についてお話しします。
第2話のポイント
①BIPVの導入の今
②BIPVの特徴
③PVの標準化
今回は第2話の前半として①②をお話しします。
ポイント①「BIPVの導入の今」
まず、2018年の単年に日本に導入されたPVの量についてです。
合計では6,660MW、つまり約6.7GWです。
系統連系されていないオフグリッドがこれに2MW足されます。
さて、次の3つの内訳を見ていきたいと思います。
①がBAPV(地上設置を含む)。ちょっと言葉的におやっと思った方がいらっしゃると思いますが、統計上、非住宅の地上設置はここに入っています。
②がメガソーラー(地上設置の発電事業用)です。
③がBIPVです。
それでは、内訳を見ていきましょう。
まず、①BAPVのうち、住宅用の10kW未満のものです。
全体のうち、9.4%を占めており、容量としては628MWです。
これって家何件分ぐらいかというと、
1件当たり4.5kWとすると14万件分に相当します。
次にBAPVのうち非住宅を見てみます。
地上設置を含む、非住宅、10kW~1MWで全体の41.5%を占めます。
容量としては2,764MWです。
ここで桁が変わりましたね。
モジュール面積で言うと、効率20%だとして、メンテナンススペースなし(隙間なし)で敷き詰めるとして、14平方キロぐらいです。
結構な面積ですね。
さて、次にメガソーラーを見てみます。
②の地上設置の1MW以上のメガソーラーは、
全体の48.6%を占めて、容量としては3,238MWです。
①のBAPVの合計より若干少ないぐらいで、3.2GWを超えているので、
結構、大きな数という事がわかると思います。
じゃあ、BIPVはどこにあるのかというと・・・
③のBIPV(~250kW未満)は、まだ全体の0.5%という小さい値です。
容量としては30MWです。
この数だけを見ると、まだ普及にハードルがあるように見えますが、
同時に、今から普及が始まる段階だといえると思います。
今は、まだこんなに少ないのですが、これからどれだけ入る余地があるのか、
導入ポテンシャルを紹介したいと思います。
BIPVの日本における導入ポテンシャルです。
この値は、2016年度のNEDO事業で太陽光発電技術研究組合が行った、
BIPVの動向調査の報告書を参照しました。
2030年の既築の建築物全体で、22~149GWのポテンシャルと試算されています。
2018年の30MWと比べると実に1000倍弱~5000倍程度の値です。
また、この値は、2018年末までの累積導入量(つまり56GW)の0.4~2.6倍もの値であり、
かなり大きなポテンシャルがあるということになります。
ただ、これはあくまでも設置可能なポテンシャル試算ということで、
実際の市場規模は、これを限界値の目安として、これよりも小さい値になります。
市場予想も含めた詳細は、このシーズンの第4話でお話ししたいと思います。
では、ポイント②のBIPVの特徴に入っていきます。
BIPVの特徴というと、沢山あるのですが、そのうちから4つをピックアップしてお話ししたいと思います。
ポイント②「BIPVの特徴」
一点目は、第一話でも少しお話ししましたが、もちろん、建材性能があるということです。
耐火、耐風、防水漏水、断熱、そして日射遮蔽などです。
ここに挙げたのは一例で、建材性能として重要なものとして、
機械的強度、防音、気密性、安全性なども入ってくると思います。
次が、期待される寿命が長いことです。
これは、このPVPSの文献に記載があります。
標準的なPVの保証(寿命じゃなくて保証です)は、20~30年です。
しかし、一般的な使用期間は、25~35年、長いときには30~40年が期待されています。
BIPVの場合は、どうかというと、まず、少なくとも、
通常の建材(外壁などですね)と同等の耐久性である必要がある、
また、不具合品というか劣化・故障の際の交換が一般的にはBAPVよりも簡単ではない、
ということで、BAPVよりも長い寿命が期待されます。
寿命そのものではないのですが、耐用年数についてお話ししたいと思います。
耐用年数は、法人税・所得税等の経費の計算に使われます。
耐用年数とは、建物のような時の経過等につれて価値が減っていく資産、
つまり減価償却資産が、利用・使用に耐える年数のことです。
この耐用年数は、あくまでも税法上の計算根拠なので、寿命そのものではないのですが、
一つの目安にはなると思います。
その耐用年数が、造りと用途によって異なるので、表でお見せしたいと思います。
まず、木造・合成樹脂造です。
事務所で24年、住宅・店舗・病院・旅館・ホテルでは22~17年、工場・倉庫で17年です。
ただし、メンテンナンスによってもっと長い寿命が期待できると思います。
次が、レンガ、石、ブロック造りの建物で、一気に数が伸びて、
事務所で41年、住宅・店舗などで38~36年、工場・倉庫で34年です。
続いて、最も長いのが、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造で、
事務所で50年、住宅・店舗棟で47~39年、工場・倉庫で38年です。
実際の寿命が、メンテによってもっと伸びることを考えると、50年を超えてくることになります。
つまり、建物の寿命は標準的なPVの保証よりも、期待寿命よりも長い。
ということで、BIPVは、もちろん、寿命が長いことが、もちろん好ましいのですが、
やはり、メンテを前提に、ビル設計の早期にBIPVの設計も取り込んでいく必要があると思います。
では、次に特徴の3番目に入っていきます。
BIPVの特徴③です。
標準的なPVは、傾斜面設置されます。
一方、BIPVは壁面に設置される場合には、このビルはただのイメージ図ですが、
鉛直設置になります。
この鉛直設置によって、標準型とは発電パターン、不具合の発生、周辺への考慮が変わってきます。
今回は、周辺への考慮だけすこしお話しして、他は第3話でお話しします。
周辺への考慮ですが、グレアです。
グレアとは、この写真で太陽が映り込んでキラッとしていますが、
このような「物の見えづらさを生じさせるような”まぶしさ”のこと」です。
こういったグレアを低減するには、メンテの場合と同様に、
ビル設計の早期から、BIPVを設計する必要があるという事です。
では、BIPVの特徴4つめに入ります。
四つ目のBIPVの特徴は意匠性です。
建物の外皮に組み込まれるのがBIPVということは、
人から見られるということなので、意匠性が重要になります。
例えば、どこかの会社の自社ビルとなれば、不揃いなパーツからなるビルよりも、デザインされたカッコいいビルの方がいいと思います。
BIPVがこういった意匠性にこたえることができれば、
デザイン性を持たせつつ、環境意識の高さを周囲にうまくアピールできると思います。
今後、こう言った観点から、BIPVの価値がもっと重要視されてくると思います。
さて、この図は、第一話の最後にお見せしたIEA-PVPSの表紙の図です。
BIPVは、屋根、天窓、壁面、バルコニー、シェード、窓など多岐にわたります。
これに対応するように、形、大きさ、色、さらには、透過性といった複数の機能が要求されます。
つまり、BIPVは豊富なバリエーションを持つことになります。
この意匠性を実現する技術については、次の第三話でお話ししたいと思います。
さて、バリエーション豊かなPVというのは建築デザインの色んな要求にこたえられるという意味では価値が高いと思います。
一方で、普及に関わるBIPVの標準化という観点からは、どうでしょうか。
この標準化については第二話の後半でお話ししたいと思います。
それでは、今回のまとめをしたいと思います。
今回のまとめ
今回の一言は・・・
「BIPVは伸びしろ大!」
でした。
■YouTube
音声で補足した内容を見たいという方はYouTubeの太陽電池大学をご覧ください。
■コメントについて
この記事は、出演者自身の経験と適宜文献を参照して考察したものです。
ベストを尽くしているつもりですが,もっと新しい情報がある!こんな考え方もある!という方は是非お知らせください。情報・考えを共有したいと思います。
参考資料
■NEDO高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発 動向調査等
BIPV(建材一体型太陽光発電)に関する検討 平成28年度成果報告書 (太陽光発電技術研究組合)
NEDO成果報告書データベースよりユーザー登録後ダウンロード可能
画像の出典
サムネ Photo by Richárd Ecsedi on Unsplash
ビル群(導入ポテンシャルの頁) Photo by Ilyuza Mingazova on Unsplash
炎(BIPVの特徴①②の頁)Photo by Maxim Tajer on Unsplash
雨と光(BIPVの特徴①②の頁) Photo by Ryoji Iwata on Unsplash
ビル(BIPVの特徴①②の頁)Photo by Lewis Roberts on Unsplash
ビル(BIPVの特徴③の頁) Photo by Artiom Vallat on Unsplash
ビル(BIPVの特徴③の頁) Photo by Nori Webb on Unsplash
ビル(BIPVの特徴④の頁) Photo by Scott Webb on Unsplash
峯元のプロフィール
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